小さなキミと
「涼香んとこの家族を基準に考えちゃダメだって。そりゃ怒る……」


突然、結が言葉を切った。


結はジッと服部の方を見つめ、何か考え込むように自分の顎を触った。


「結?」


あたしの呼びかけには答えず、吸い込まれるように、結は再び教室に入って行った。


おもむろに結は服部に近づいて行ったが、結が話しかけたのは彼ではなく、隣の長身の男子の方だった。


最初は驚いた様子の長身の彼だったが、突然パァッと笑顔になった。


結は結でとびきりの笑顔を浮かべていて、2人は何やら楽しげな会話で盛り上がっていた。


なんだなんだ、結の知り合いなの?


2人の傍で、あたしと同じように呆気にとられている服部が、何だかとても間抜けに見えた。


「あ、涼香。ちょっと来て」


しばらくして、結はあたしの存在を思い出したように手招きした。


えぇー、またあのチビとご対面?

ヤダなぁ……。


とはいえ結には逆らえないので、渋々教室へ足を踏み入れる。


「あのね、昔通ってた英会話教室で一緒だったんだ。葉山 圭(はやま けい)くん」


長身の彼をてのひらで指して、結が言った。


「どーも。奏也と言い合いしてたみたいだけど、知り合い?」


ペコッと軽く会釈して、人懐っこそうな笑みを浮かべた葉山くん。


あたしが人を見上げるなんて。
この人、身長何㎝くらいあるのかな……。

180くらいかな?


なかなかない経験にドギマギしながら、あたしはそんなことを考える。

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