小さなキミと
服部によると結と葉山くんは今、お昼のパレードに備えて場所取りをしているところらしい。


「近くに何かねえの?
ハァ? どれだよ赤い建物って! この周辺赤いモンばっかじゃねーかよ!」


前を見れば、歩きながら服部がスマホの奥の葉山くんに向かって怒鳴り散らしていた。


赤いモンばっかって、そりゃそうだよ服部。


だってこの辺りはレッドゾーンっていう名前が付いてるくらいですもの。


「何? 今聞こえんかった。レッド、何?
ラビット? ウサギ? あぁ、あのデケェ風船の塊のことか!
つーかあれウサギなの? ここから? 見える見える」


言いながら方向転換した服部。


声の調子とその足取りから、結たちの大体の位置が分かったみたいだった。


服部のおかげで、すぐにあたしたちは先に行った2人と合流することが出来た。


道路脇の地面に敷かれたレジャーシートに腰を下ろしていた結と葉山くんに、相変わらず結は準備が良いなと感心する。


そのレジャーシートはどう見ても女子向けの可愛らしい花柄だったので、葉山くんの私物とは考えにくい。


「来たな遅刻魔」


さっそく結になじられたあたしは、挨拶よりも先に2人に謝った。


「本気でごめん、まさか自分がこういう大事な日に寝坊するとは思わなくて……」


すると急に結の視線が下がったので、つられてあたしも視線を落とす。


あッ……手ぇ繋いだまんまだった!


咄嗟にパッと手を離したのはあたしだけではなかった。


服部も結の視線に気づいたらしい。


「別にいーのよ遠慮しなくてもぉ」


そう言う結の顔は、あのおとぎ話に出てくるピンクのネコみたいなニタニタ笑顔。


あたしの額から一気に汗が噴き出した。

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