小さなキミと
「いいなあ……」


言いつつ、あたしは薄い生地ごとお肉を口に頬張った。


「自業自得でしょ。涼香さぁ、服部くんにちゃんと謝った?」


「────謝ったよ! ってか結、あたし子どもじゃないんだからそんな言い方しないでくれる?」


モグモグしながら抗議し、あたしは口を尖らせる。


すると結は「だそうですが服部くん本当なの?」とあたし越しに、服部に話を振った。


「いや、オレ謝られた覚えないけど」


「ちょっとーーーー!」


服部のまさかの裏切りに目を剥くと、彼はフッと鼻で笑った。


「興奮して眠れなくて次の日寝坊とか、お前マジで小学生」


服部の言いように結が吹(ふ)いた。


「ホントだよねー! あたしそれ、昨日の夜電話で聞いて呆れたわー。
『興奮して眠れないの!』とか言って。
小学生か!つって切ってやったけどねー!」


ぶうたれるあたしには目もくれず、結は服部に向かって声を大にした。


まぁあたしが悪いんだから何も言えないけどさ……。


「マジで? つーかオレも同じ事言ったって!
昨日オレにもコイツから電話かかって来てさ。
で、夜中12時過ぎてんのに第一声『暇!』とかアホだろ?」


服部も本人目の前にして言いたい放題言ってくれて────あれ?


あたしは小さな違和感を覚えて首を捻った。


何だろう、この違和感。


「えっと……服部くんも涼香から電話かかって来たの?」


そう訊いた結も、何だか少しだけ戸惑った様子だ。


「そー! んでワケ分かんねーんだけど、コイツ急に眠いから切るって言い出し」

「服部が結と普通に喋ってるッ!」


あたしの大声で、服部だけでなく周りの客までが顔をしかめたので、あたしは咄嗟に「すいません」と謝った。

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