小さなキミと
違和感の原因が分かった。


彼があまりにも自然に会話を広げたから一瞬スルーしそうになったけれど、服部は未だにあたし以外の女子が苦手だったはずなのだ。


あたしの覚えでは、夏休みに入るまでは。


服部にとって、葉山くんと親しい結は女子の中でもまだ平気な方だった。


とはいえ、こんな自然に会話出来るほどではなかったと思うんだけど……。


「えっ、何で何で? いつの間に女嫌い治ったの?」


あたしの問いに、服部は少し考え込むような顔になった。


「そういえば……最近出ないかも」


言いつつ服部は、七分の袖をたくし上げた。


「なになに、何の話?」


不思議そうな顔で尋ねる結には、隣の葉山くんが耳打ちで教えたようだ。


この中で、服部の蕁麻疹の話を知らないのは結だけだった。


「アレだ、バイトで慣れたんだきっと」


1人で結論付けた服部に、「どーいうこと?」とあたしが尋ねるとなぜか彼は口ごもった。


「奏也のバイト先、たしか女子ばっかなんだよな」


「うっそ!」


葉山くんからの驚きの情報に、信じられない思いで服部を見る。



「ちが、いや違わないけどそうじゃないっていうか……
つーか圭、それ言ったの聡だろ!」


服部が矛先を葉山くんに向ける。


「当ったりー」


そう言った葉山くんは、笑顔でVサインを作っていた。


「……さとし、って服部のお兄さん?」


服部が渋々という感じで頷いたので、あたしはさらに質問を重ねた。


「バイト先、女子ばっかりなんだ」


「違うって!」


即答だったけど、それが逆に怪しく思えた。

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