小さなキミと
口の中のものをゴックンと飲み込んでから、服部が吠えた。


「だから何でもかんでも喋んじゃねぇって!
つーかオレそんな事言ってねぇよ!」


「言ったよ! 服部が告ってきた次の日!」


あたしの反撃に目を見開いた服部が、顔を真っ赤にして口をつぐんだ。


「しかも3回ね」


「結違う! 2回だから!」


「なにそれ初耳なんだけど」


葉山くんも加わって、あたしたちは大いに揉めた。


遠くの方で愉快な音楽が聞こえてきたのはそんな時だった。







水撒きパレードのフロートが全て去り────


揃って水浸しになったあたしたちだけど、じりじりと照りつける日差しのおかげですぐに乾いてしまった。


1、2時間待ちなどというのは、人気のジェットコースターぐらいだった。


他のアトラクションなら、30分前後で乗れるものがほとんど。


4人でいくつか回ったのち、あたしたちは2-2で別行動することにした。




たまたま見つけた小型のジェットコースターがかなり空いていたので、服部を引っ張って列に並ぶこと3周り。


3回目の乗車を終えて、「もう1回!」と列に戻ろうとするあたしを服部が全力で止めに入った。


この子供向けのジェットコースターは、服部には物足りないみたいだった。




「言っとくけど、オレ絶叫系全然大丈夫だから」


最初の宣言通り、服部は今のところ余裕で絶叫系アトラクションを楽しんでいた。


男子は絶叫系が苦手っていうイメージがあったんだけど、服部には当てはまらないらしい。




それからというもの、あたしたちは比較的待ち時間の少ないジェットコースターを次々と制覇していった。


あれほど意地になって怒っていた服部も、いつの間にかすっかりご機嫌だった。


心配なのはむしろ結たちの方だ。


絶叫系が苦手だという葉山くんに、スリル大好きの結が耐えきれるかどうか。


まぁ大丈夫だとは思うけど。

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