小さなキミと
「────なに、お前もリッキーと写真撮りたいーとか思うワケ?」


「えっ」


あたしは一瞬答えを迷った。


ここは撮りたいと言った方が女子っぽい……?


でも正直あたしは大きな着ぐるみさんと写真を撮るために並ぶよりも、1つでも多くのアトラクションに並びたい派なんだよね。


「あたしは別にいいや! そりゃ一緒に撮れたら嬉しいけど、わざわざ並ぶのはめんどいし。
それより腹減った!」


今さら女子ぶる相手じゃないしなと開き直ったあたしに、「言うと思った」と服部は笑った。


「ちょっとそこ座って待ってろ。 すぐ戻るから」


そう言ったかと思えば、服部はどこかへ走って行ってしまった。


ちょうど近くのベンチが空いたところだったので、そこに座っていろという事らしかった。


さり気ない気遣いが、何だかニクイ。


服部だって、1日歩き倒して疲れてるはずなのに。


どうせ食べるモノでも買ってきてくれるつもりなんでしょ。


もぉ本当にカッコイイヤツだな服部くんってば……。


嬉しいような恥ずかしいような気持ちで、ベンチで1人ニヤニヤしていた時だった。


あたしが彼らに声をかけられたのは。


「おねーさん1人?」


視線を上げた先には大学生くらいの男が2人居て、あたしの目の前で人懐っこそうな笑顔を作っていた。


1人は金髪、1人はヘンテコな刈り上げ茶髪。


せっかくのお洒落な服を、これでもかというくらいにだらしなく着崩していた。

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