小さなキミと
「やめろよ、オレこんなヤツ知らねーよ」


しらじらしくそう言ったのは、葉山くんの隣で相変わらず不機嫌な様子の服部だ。


このチビ、よくもそんなことが言えるな。


「お言葉ですけど、こっちは被害者なんですよ。あなたのせいで、チャリ壊れたんですよ。足、捻挫したんですよ。
他人のふりしてアレを無かったことにする気? 示談うんぬんは口だけってワケ?」


強い口調で服部に詰め寄るが、彼がひるむ様子は全くない。


それどころか、図々しく言い返してきた。


「被害者ぁ? お前、オレが全部悪いみたいに言ってんじゃねーよ。
気づいてないなら言うけど、こっちのチャリだって壊れてんだよ。
後ろのライトが割れたんだよ。お前のせいでな」


ラ、ライトだって?


「そんなの、あってもなくても走れるじゃん」


とは言いつつも、その事実に内心驚いていた。

完全に、あたしだけが被害者だと思っていたから。


「うるせぇよ。大体さぁ、お前……」


「はいはい、続きはメシ食いながらやろうか」


早々に、今度は葉山くんが止めに入った。

きっと、服部がさっきの話題を掘り返そうとするのを察したんだろう。


っていうか、メシ食いながらってどういうこと?


「は? オレは帰るって言ってんじゃん」


「そんなこと言わずに付き合ってよ。オレ、結と久々に話したいし」


服部と葉山くんの会話がいまいち理解できずにキョトンとしていると、結があたしに笑顔を向けた。


「涼香、この後みんなで食堂行くよ」

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