小さなキミと
「えっ、あ、あたしですか?」


突然の事に戸惑ってキョロキョロと辺りを見回すあたしを、金髪と刈り上げがくすくす笑った。


「キミで合ってるって。
もしよかったら、オレらと一緒に回らない?」


いっしょに……、ってええええぇ!?


これってもしかして、ナンパ!?


人生初の出来事に、動揺で心臓が派手に揺れる。


「あ、あの、あのあたし人を待って……」


必死に絞り出した声は、金髪によって途中で切られた。


「じゃあその子も一緒にどう?
っていうかキミ、スタイル超良いよね。足めちゃくちゃキレーなんだけど」


いきなり足を褒められ、あたしは目が点になった。


「それにアレだ、キミ女優の……何だっけ、あの朝ドラで有名になった女優に似てる!」


似てるよなぁと金髪が刈り上げに話を振るが、刈り上げは疑問な顔で首をかしげるだけだった。


「やっぱ似てるよ。あぁダメだ名前分かんないや。
ねぇ、似てるって言われない?」


「いや、あの、ちょっと分かんないです……」


遠慮なくジロジロ見てくる彼らに、あたしは内心ビクビクだった。


早く戻って来て服部ーーーーっ!


金髪はあたしが強く言えない女だと判断したらしく、さらに顔を近づけて来た。


ナンパするだけあって中々の男前で、顔は日焼けで真っ黒。


「キミ、本当に可愛いね……。
名前なんていうの?」


歯の浮くようなセリフを惜しげもなく披露する金髪。


単純なあたしは一気に顔が熱くなり、ブンブン首を横に振った。

< 220 / 276 >

この作品をシェア

pagetop