小さなキミと
「そんなあたし全然っ、可愛くなんて」


ハハ、と金髪は軽く笑った。


「そーゆうとこも可愛いよ、なぁ?」


振られた刈り上げは、「あぁ」と短く同意した。


「やっぱり君のこともっと知りたくなっちゃった。
一緒に回ってよ、オレの為にさ」


そう言って、金髪は身を引いて手を差し伸べてきた。


まるで決め台詞のように、自信満々のまぶしい笑顔で。


見た目はチャラくて軽そうだけど、話し方は意外と丁寧だし強引すぎるという事もない。


最近のナンパはこんな感じなのかな……?


つい手を取ろうとした自分に気づき、慌てて我に返る。


ダメダメ騙されるな、こういうのは100%全てお世辞なんだ。

って、昔イトコのみっちゃんが言ってた気がする。


っていうかアホか涼香!

アンタにはれっきとした彼氏がいるでしょうが!


「あの、あたし……!」


彼氏を待っていると言おうとしたその時、


「コイツになんか用ですか?」


横から聞き慣れた声が割り込んできた。


「服部……」


肩で息をした彼を見た瞬間、あたしは緊張の糸が切れたように頬が緩んだ。


「えぇと、彼はキミの……?」


「彼氏です」


あたしが口を開く前に、服部が金髪の問いに答えた。


「そうかぁ。なんだキミ彼氏持ちかぁ、残念だな」


金髪はやはり人の良さそうな笑顔を浮かべて服部とあたしを見比べ、言った。


「ずいぶんと可愛らしい彼氏だね」


彼らはヒラヒラと手を振って、すぐにその場から居なくなった。


悪い人ではなさそうだったけれど、最後の一言は完全に余計だった。

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