小さなキミと
せっかく機嫌が直ったと思ったのに……。


服部はしばらくの間、ものすごく殺気立った顔で、男たちが去って行った方向を睨み付けていた。


「……服部?」


耐えきれず声をかけると、ハッとした様子で服部が振り返った。


「お前……! なに普通に付いて行こうとしてんだよアホか!」


ガシッと肩を掴まれ、すごい剣幕で怒鳴られてしまった。


「つ、付いて行こうとはしてないよ」


「手ぇ伸びてんの見えたけど?」


「そっ、それはあたしの頭がどうかしてて!
ちゃんと彼氏を待ってるっていうつもりだったから!」


「ふーーーーん」


とは言いつつも、服部は全然納得していない様子だった。


あたしの隣にドスッと乱暴に腰を下ろし、無言で何かを差し出してきた服部。


それは暑い夏にぴったりの、棒に刺さったシャーベットアイスだった。


「あ、ありが」


受け取ろうとした瞬間、服部がアイスを引っ込めてしまった。


「アイツらに何言われた?」


「……一緒に回らないかって」


あたしはアイスを取ろうと手を伸ばすけれど、服部にまた上手くかわされた。


「他は?」


「別に……。大したことは言われてないよ」


言葉とは裏腹に、可愛いと言われたのを思い出して顔が熱くなってしまう。


「お前、マジで嘘下手な。
早く正直に言わねぇと、アイス溶けるよ?」


服部の言う通り、アイスはビニールの包みの中で既に溶け始めていた。


せっかく買ってきてくれたのに、2つとも無駄になっちゃうのは嫌……だけど、アレを服部に言うのも気が引ける。


短い葛藤の末────あたしはアイスを取った。

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