小さなキミと
それは自分で口にするにはかなり抵抗のある褒め言葉で。


そして、冷静に考えればただのナンパの決まり文句だった。


「……ちょっと、何とか言ってよ恥ずかしい!」


せっかく勇気を出して白状したのに、無反応は厳しい。


これじゃあたしはただのナルシストじゃないか。


「……ん、やる」


このタイミングでアイスを渡すその真意は……?


服部の心が読めなかったけど、あたしは取りあえず受け取ったアイスのビニールを破って1口かじった。


「可愛い、ねぇ」


ボソッと呟いた服部の声に、あたしは思わず喉を詰まらせる。


「分かってるから! ただのお世辞だって分かってるから何も言わないで!」


「……いや、そうじゃなくて」


服部は、歯切れの悪い口調で言葉を続けた。


「お前を1人にしたオレも悪いけど……剛やっぱお前……足、出し過ぎ」


────は?


一瞬、言われたことが理解できなくて頭がフリーズする。


いや違う、理解できないんじゃない。


理解したくなくないんだ。


だってそんなの辛すぎる。


「……どうもすいませんね、お見苦しいモン丸出しにしちゃって!
今度からはちゃんと隠してきます!
そーすればナンパ男にすら変な気ぃ遣わせることございませんもんね!」


ほとんど半泣きで畳みかけたところ、「ハァ!?」と服部が頓狂(とんきょう)な声を上げた。


「おめーは本当に通じねぇな!」


「何がよ! どーせあたしみたいなデカ女、誰も可愛いなんて言ってくれないもん!
お世辞だろーが何だろーが、喜んだって別にいいじゃん!」


あたしはフンッと鼻を鳴らして服部に背を向け、シャクシャクとアイスを歯で削っていった。

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