小さなキミと





「ねぇ、涼香たちまた喧嘩したの?」


「べっつにー」


どこから聞いてもふてくされたあたしの返事に、結は呆れたように笑った。


「奏也は奏也で拗ねてるしね。本当見てて飽きないよ、奏也と剛さんって」


葉山くんのそれは褒め言葉ではない。


少なくとも今のあたしにとっては。


アイスを食べ終えるまでお互い無言を貫いた後すぐに結と連絡を取って、たった今合流したところだった。


「6時半か……そろそろ晩飯食う? 今のうちに並ばなきゃ入れないだろうし」


葉山くんの提案で、あたしたちは4人で近くのレストランへ入った。


早めの夕食になると思ったけれど、中々の混み具合でそうはならなかった。


加えて立ちこめる香ばしい匂いから、待ち時間は異常に長く感じたのだった。


レストランを後にした時、外はすっかり日が暮れて真っ暗だった。


とは言っても、街頭や気合の入った飾りライトのおかげでかなり明るく感じたけれど。


終電の時間があるので、そろそろ帰らなきゃならない時間が迫って来ていた。


「オレら今から観覧車乗ろうと思うけど、奏也と剛さんはどうする?」


葉山くんに言われて、あたしはチラッと服部を見やる。


まだ怒ってるのか拗ねてるのか知らないけど、ご機嫌はよろしくない様子。


こんな服部とまた2人で行動するのは気が重いので、取り合えず結たちに付いて行くことにした。


並ぶこと数十分。


やっと順番が回って来て、結と葉山くんが乗り込んだゴンドラに続こうとしたあたしの腕を服部が掴んで引っ張った。


「え……?」


キョトンとしているうちに、結たちのゴンドラは係りの人によって閉められてしまった。


あたしはやむを得ず、次のゴンドラに服部と2人で乗り込むことになった。

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