小さなキミと
ガタンガタン、というわずかな機械の音がうるさく聞こえるほど、ゴンドラの中は静かだった。


こんなの……やだな。


せっかくの遊園地デートの終わり方が、喧嘩別れになるのは悲しい。


もしかして服部……仲直りの機会を作ってくれたの?


服部も意地になってるだけ……なのかな。


あたしの正面に座る服部は、どこか難しい顔をしていた。


服部のこういう顔を、あたしは何度か見たことがある。


服部が考え事をしているときの顔だ。


仲直りのキッカケを考えてくれてたら嬉しいんだけどな。


キッカケが欲しいよね、やっぱり。


キッカケキッカケ……。


「やっ、夜景! キレーだよね!」


「────うん」


会話が終わってしまった。


服部、『うん』って何だよ『うん』って!


もっと広げてくれよ!


仕方がないのであたしは別の話題をふっかけた。


「夏休み、もうすぐ終わっちゃうね」


「────そうだな」


またまた服部の一言で終了。


このガキ、あたしと会話する気あるのかよ?


「はっとりぃー。あたしは服部が何考えてるのか分かんないー」


投げやりな気分でそう言って、視線を夜景に移す。


と、その時突然ゴンドラが大きく揺れた。


一瞬肝を冷やしたが、揺れの原因は服部があたしの隣に移動したからだった。


「え、なに、突然どうした……」


次の瞬間、あたしは服部の腕の中に居た。

< 225 / 276 >

この作品をシェア

pagetop