小さなキミと
「えぇっ、何で?」


驚くあたしに、結は意味深な上目づかいで言った。


「そりゃー、感動の再会? なワケだし、積もる話もあるよ」


なるほどねー。

って、それならあたしは必要ないじゃん。


「だったらアンタら2人で……」


「涼香だって」


間髪入れずに結が言う。


「彼と仲直りしといた方がいいでしょ。これから1年同じクラスなんだしさ」


「仲直りって、もともと仲良しの人に使う言葉じゃなかったっけ?」


あたしの屁理屈に、眉間にしわを作る結。


「いいから行くのっ」


あたしの腕をがっちり掴んで、有無(うむ)を言わせず歩き出した。


「ちょ、あたし足……っていうか、そもそも今日車なんだってば」


結に引きずられながら必死で訴えるあたしだけど、彼女は全く聞く耳持たずといった感じだ。


「電話は、したの? してないの?」


教室を出たところで、結が立ち止って振り返った。


「……まだしてませんけども」


あぁ、なんで正直に答えちゃったんだろ。


それを聞いた結が勝ち誇ったように口角を上げたとき、すぐ後ろで男子の喚(わめ)き声がした。


「お前、マジふざけんなッ」


言わずもがな、声の主は服部だ。


葉山くんに肩を掴まれて、仏頂面で教室から出て来たところだった。

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