小さなキミと
「────じゃあ今からオレんち来る?」


服部の新たな提案に、あたしは目をパチクリさせる。


「え、いいの?
家の人とか……その……」


こんな急に服部の家族と顔を合わせる事になるなんて……と気おくれして口ごもったあたしに、服部が軽い調子で言った。


「いいよ別に。つーか父さんどーせ今日も遅いし、兄貴は多分バイトだし」


「あっ、そうなの?
なぁんだ無駄に緊張しちゃったじゃん、先に言ってよそういう事は!
じゃあお邪魔しよ……」


そこまで言ってあたしは気づいた。


それってつまり家に2人きりという……事に、なるんですよね────


ちょっと待って考えさせて!

心の準備が出来てない!


アワアワと1人で煩悩頭を回転させているあたしに、服部がきわめて冷静に言葉を落とした。


「言っとくけど、勉強以外の事は一切するつもりねぇから」


「なっ、なに言ってんのバカじゃないの当ったり前じゃんっ!」


心の中を読まれたのが恥ずかしすぎて、そしてそういう事を意識しているのが自分だけだという所がちょっぴり悔しくて。


服部に向かって、ついつい大声で当たり散らしてしまった。


「バカじゃねぇし」


案の定、服部が拗ねた口調でそっぽを向いてしまう。


「あぁゴメン服部そうじゃない、あたしが言いたいのは……っ」


そこで言葉が詰まる。


ダメだな本当にあたしってヤツは。


自分の言いたいことすらうまくまとめられないなんて……。

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