小さなキミと
と、突然服部がフッと笑みをこぼした。


「お前っていつもそうだよな。意外と口下手っていうかさ」


言われた途端にカァッとあたしの顔が熱くなる。


「うっ、うるさいなぁ!
服部のくせに生意気なんですけど!」


「オレのくせにって何だよ。お前ちょっと落ち着けよ」


呆れたようになだめる服部の態度が、あたしの暴言に拍車をかけた。


「うるさいガキ!」


「ハァ!? どっちがだよ!」


「チビのくせに! ガキのくせに!」


「……てめぇ本気で怒るぞ」


服部にすごまれ暴言は飲み込んだものの、あたしはムスッとした顔で服部を睨み付ける。


そんああたしに、服部はなぜか少しだけ笑みを含めたため息を吐いた。


「で、結局お前今日どーすんの?」


「……行かせていただきます。“ベンキョウ”、する為に、ね」


目的をしっかりと強調して答えると、服部はどこか満足げに「了解」と言った。


そうと決まれば一刻も早く帰宅して、勉強する時間を確保したいところだ。


という訳で、引いて歩いていた自転車に乗ろうとしたあたしを、服部が止めた。


「一応、先に兄貴に電話しとくから、ちょっと待って」


大丈夫だと思うけど念の為、と服部は言った。


何が大丈夫なのか────この謎はこの後すぐに解けるのだった。


「あーオレだけど。お前今どこ?
あ? 理由とか別にどーでもいいだろ、今どこに居るかって訊いてんの」


お兄ちゃんに向かって『お前』って……。

服部の兄への態度は、あたしの想像していたそれとは少し違っていたようだ。

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