小さなキミと
「は……、何で今日に限って家に……。
バイトは? ────あっそ」


それからしばらく会話を続け、電話を切った服部。


何を言われるか、あたしは彼の受け答えから大体分かってしまった。


「あのさ、オレから提案しといて悪いんだけど……。
さと、じゃなくて兄貴今日バイト休みらしくて。
大学のサークル? の人たち呼んで、今オレんちで飲んでんだと」


────そう来たか。


「へぇ、お兄さんバイトじゃなかったんだね……」


服部の部屋は見てみたかったけど、隣の部屋で酔っぱらいの大学生が騒いでるってのはちょっとなぁ。


うるさいししつこいし、面倒くさいんだよな、酔っぱらいってのは。


あたしは育って来た環境上、飲み過ぎて悪酔いした大人たちを何度も目にしたことがある。


「────じゃあ、服部がウチ来る?」


あたしの提案に、今度は服部が目をしばたたいた。


「先に言っとくと、父も母もまだ仕事中だから大丈夫!
で、弟2人も……今日金曜だから大丈夫!」


「金曜だから大丈夫って何だよ?」


「まぁそれは着いてから説明するよ」


あたしのアバウトな説明に、服部はどうも腑に落ちない様子だ。


「服部、どうする?」


彼はアゴに手を当て、例のごとく難しい顔をして数分間悩んでいた────

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