小さなキミと





「あーっ、それ覚えてる。あの日はヤバかったよね。見事に全員宿題忘れてきてさぁ」


結がクスクス笑いながら言った。


「そうそう、そんでサヤカ先生すっげー怒っちゃって、今日は帰れーって教室追い出されて」


葉山くんは、懐かしそうに目を細めた。


「迎えなんかまだ来ないから、その間みんなでドロケーとかして遊んだよね。近所の公園で」


まだまだ彼らの思い出話は続きそうで、あたしは正直気が重かった。


2人とも話に夢中になりすぎて、料理が全然減っていない。


食堂に来てから早45分。


半券を買うのに並んだ時間と、席が空くのを待った時間を抜いたにしても、30分は確実に経っている。


いくらなんでも、食べるの遅すぎじゃないの?


あたしの隣で、結がまた笑い声を上げた。

つられたように葉山くんも笑う。


テーブルを挟んで向かい合う、ご機嫌な2人の楽しげな会話は、いつまで経っても途切れない。


一方で、面白いぐらいにそれとは対照的なのが、あたしと服部だ。


強制的に向かい合わせの席に座らされたあたしたちだけど、お互いそっぽを向いて黙りこくっている。


食堂のおばちゃんによって山盛りにされたチャーハンは、とうの昔に平らげた。

同じく服部のお皿も空っぽだ。


あたしはお盆を運ぶタイミングをうかがっていた。

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