小さなキミと
「あっ、そ、そうだ。服部の家族に電話しなきゃ」


母親から逃げる口実を見つけたあたしは、慌てて店の奥へと引っ込んだ。


だけど服部の家族に連絡を取ろうにも、当然あたしにはその電話番号が分からない。


という事で、頼みの綱の葉山くんに電話したのだけれど……


『電源が入っていないか電波の届かない場所に』


────おいおいおい葉山くん、こんな時に限って何で電源切ってんの!


「お姉って、ロリコンだったんだ」


「ハァ!?」


振り返ったあたしの目に映ったのは、何とも言えない渋い表情を作った中1の弟、凛太朗(りんたろう)の姿だった。


「だってアイツ、オレより年下か同じくらいじゃね?」


本人が聞いたら激怒しそうな発言をしつつ、凛太朗は視線で服部を指す。


年下からも小学生呼ばわりされる可哀想な服部少年。


「アンタなに言ってんの……。
服部はあたしと同い年! 高1! リンより3つも年上!」


ため息混じりに言ったあたしに、凛太朗は目を丸くした。


「えっ、マジで!?
アイツ、じゃなくてあの人オレよりも年上なの?」


声変わりの途中のかすれた声が、余計にあたしの癪(しゃく)に障る。


「それとねぇ、あんたロリコンの意味分かっ」


「すんませーーーーん、ちょっと零しちゃったんですけどぉ」


座敷の席の方からの客の声に、あたしの言葉は遮られてしまった。

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