小さなキミと
「で、そのお母さんは相変わらず派手なの?」


葉山くんの問いに、結がアハッと笑って頷いた。


「うちのお母さん、年々派手さが倍増してんだよね」


「マジかぁ」


面白そうに言った葉山くんは、水の入ったコップに手を伸ばした。


行くなら今だ!


「あ、あのさっ」


口を開くと同時に、あたしは思い切って立ち上がった。


「あたし、そろそろ帰るわ。早いとこ、みっちゃんに電話しなきゃだし」


言いながらスクールバッグを肩にかけ、お盆を両手で持ち上げる。


結が何か言いたそうに口を開いたが、キッと睨んでそれを制した。


「じゃーね、また明日」


スカートを翻(ひるがえ)して、食器返却口へと歩を進める。


あぁもう、最高に居心地が悪かった!


「ごちそうさまでしたぁー」


おばちゃんたちにお礼を言って、そのまま食堂を後にした。


食堂は、1年の教室がある校舎とは別の、新校舎と呼ばれる校舎にある。


昨日入学式後のホームルームで説明を受けたばかりだった。


下駄箱まで少々距離があるので、歩きながら電話をかけることにした。


機械的なコール音の後、みっちゃんのハスキーボイスが耳に届く。


『あれぇー、涼香もう迎えの時間だっけ?』


みっちゃんは、のんびりとした調子で言った。

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