小さなキミと
あのお兄さんの話では、服部が飲んだのは生ビールを中ジョッキで1杯だけだ。


飲み方を間違えたのか何なのかは不明だけど、服部が相当お酒に弱いのは間違いない。


隣は弟2人の相部屋だけど、物音がしないからもう寝てしまったのだと思う。


彼らもあたしと同じ時頃に2階に上がって来ていたのだった。


2人揃ってあたしの部屋に無遠慮に侵入し、眠りに落ちた服部の事をジロジロ観察していたのは2時間以上も前の話だ。


そろそろあたしも眠くなってきたんだけど……どこに寝よう。


その時どこからか母の声が聞こえた気がした。


『ヒニンはしっかりね』


いやいやいや違う違う違うっ、何でそうなるの! あたしのバカ!


バクバクと音を立て始めた胸を押さえつつ、取りあえず風呂場へダッシュした。


もういいや、こうなったら徹夜しよう。


どうせ明日の予定なんて……


そこまで考えて、あたしは重大な事実に気が付いた。


「明日、普通に部活じゃんッ!」


どさり、と手から着替えが床に落ちた。


────アホだあたし。なんで部活の事忘れちゃってたんだろ……。


ついでに言うなら服部もアホだ。


アイツだって、部活のブの字も会話に出さなかった。


練習の時間は後で確認するとして、徹夜は断念せざるを得ない。


ササッと入浴を済ませ、髪が長すぎて面倒なので、乾かす作業は手短かに終わらせた。


完全に乾いていないけれど、まぁいつもの事だ。


明日はどうせ結ぶし部活だし、特に気にする必要はない。

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