小さなキミと
「────もっかい」


小さな声で呟いたあたしに、服部がクスリと笑う。


「お前って、いっつもそれ言うよな」


「……うるさい」


服部は、拗ねたあたしの頭をクシャっと撫でた。


「じゃこっち来て。この上からだと、オレすげー屈まなきゃなんないからさ」


服部の振る舞いが、いつにも増して大人びて見えた。


何だかこっちがガキ扱いされてるみたいで、すごく不本意。


だけどそんな扱いも悪くない、なんて思ったあたしは既に服部に酔っているのかもしれない。


素直にベッドに上がり、服部の隣に腰を下ろす。


自分から『もう1回』と言ったくせに、服部の顔を見るのが無性に恥ずかしい。


だって、これ、ベッドだよ。


ベッドの上だよ! だから何だって話だけどさ……。


「やっぱお前の方がデケェなー」


「んだとコラ!」


前言撤回、反射的に噛みついたあたしに、服部は言った。


「でもやっぱ、この方が落ち着くわ」


「……なにそれ」


新手の嫌味か、それとも遠回しの悪口?


どうもひねくれた考えしか浮かばない。


「別にぃー。お前は知らなくていいよ」


「ハァ!? そこまで言ったなら……」


あたしは言葉を飲み込んだ。


今度の理由は、服部が顔を近づけて来たからだ。


「知りたい?」


少し上目遣いの服部はどういう訳か、大人の色気をまとっていた。


「教えてあげよっか」


あたしは思わず、ゴクリと唾を飲み込んだ。


これ本当に服部……?


「────好きだよ」


それは全く答えになっていないのだけど、この時のあたしは気づかなかった。

< 254 / 276 >

この作品をシェア

pagetop