小さなキミと
2回目のキスは、いつものとは違って一瞬では終わらなかった。


触れて、離れて、また触れて、また離れて。


何度も彼の唇の角度が変わる。


その柔らかさに驚いて、気持ちいいと感じる自分にも驚いて。


身体の芯が痺れて、愛しさが溢れてくるようだった。


あぁ、なんか……熱い。頭がボーっとする。


身体中の力が抜けそう……。


リードするのは服部で、あたしはただ合わせるのが精一杯で。


最初からそうだったのか、途中から主導権を取られたのかはもう覚えていない。


知らぬ間に首元から伝わってきていた熱で、服部の手に包まれているのだと分かった。


ほのかに香るビールの苦みすら愛しく思えた。


触れ合う程度のキスが、唇を挟むような深いものに変わったのはいつだっただろうか。


それはどんどん激しさを増していった。


何でこんなの知ってるんだろう……服部のくせに。


彼の荒い息遣いにも、自分から漏れる声にもすっかり慣れた頃────


息継ぎが追いつかず、口を開け大きく息を吸い込んだ拍子に不思議な感覚が中に入って来た。


あたしは内心飛び上がった。


つまりすごく驚いた。


思わず目を見開いたあたしに気づいた服部が、すぐにそれを引っ込めた。


チュ、と音を立てて唇が離れる。


「……ごめん」


吐息がかかるくらいに近い距離で、少し息が乱れた様子の服部が呟いた。


「……ううん、ちょっとビックリしただけだから」


目を伏せたままの彼に、あたしは無性に泣きたくなった。


「もっかい」


あたしが言うと、彼は驚いた様子で顔を上げた。


「でも」


「いいよ」


彼の瞳は揺れていた。


何か言おうとした唇を、今度はあたしから塞いだ。


緊張しているのは服部も同じで、気持ちが高ぶっていたのはあたしも同じだった。
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