小さなキミと
……いや違う。


絶対違う、さすがにそれは……無い!


記憶に無いとか有り得ねぇ。


それにちゃんと服着てるし……ん?


オレは真っ先に脳裏に浮かんだシナリオをかなぐり捨て、そして気付いた。


────なんでオレ、制服なの……?


ベッドの端で自分だけタオルケットにくるまって寝息を立てている彼女から目を離し、オレは努めて冷静に記憶を辿った。


この場所が、剛の部屋だという事は思い出せた。


夕飯を食べる前に、ちょこっとだけ勉強した記憶がある。


そうだ、勉強……数学の課題を一緒にやるって事で、昨日剛の家に来たんだった。


それがなぜか、下の居酒屋で酔っ払いのオッサンに絡まれる羽目になって。


それから、なぜか急に眠くなったのだ。


あれは猛烈な眠気だった。


その原因は何だっけ……。


必死に思い出そうとしてみても、割れるような頭痛が邪魔をする。


つーか……ずっと気になってんだけど、口の中がなんか苦いんだよな……。


まさか、コレ酒の味か?


この頭痛は二日酔いってヤツか……?


え、オレ昨日酒なんか飲んだっけ。


自分の事なのに、色々謎だらけでもうお手上げだった。


オレはコメカミを押さえながら、隣で呑気に寝ている剛の肩のあたりを揺すった。


「オイ、起きろ」


寝起きが悪いのか、剛はなかなか起きなかった。


「起きろって」


声を荒げると頭に響くので、こんな風に控えめな起こし方しか出来ない。


何回かの呼びかけの後、ようやく剛が薄っすらと目を開けた。

< 258 / 276 >

この作品をシェア

pagetop