小さなキミと
「今日はお昼で終わりって、朝ちゃんと言ったじゃん。今から迎えに来てくんない?」


すると、急にみっちゃんは黙ってしまった。


えぇっ、みっちゃん、もしかして来られないの?


不安がよぎって、思わず立ち止まる。


『ごめん。私、今まだ大学にいるんだよね。授業とかじゃないからすぐ帰れるけどさ、そっち着くまでに1時間くらいかかると思う』


「1時間!? マ、マジでぇ……」


あたしはガックリと肩を落とした。


来られないワケじゃなかったけれど、1時間は長い。


『急いで帰るからさ、どっかその辺で暇潰しててよ。着きそうになったら電話するから』


「うーん、分かったぁー」


『本当にごめんねー、じゃあ後で』


あっという間に通話は終了した。


真っ暗なスマホの画面を見つめて、あたしは深いため息をついた。


どこかで時間を潰せと言われても、周りには田んぼと畑しかない。


桜通りまで行けば色々お店もあるんだけど、この足で歩いて行くのはちょっとキツイな。


図書館で本でも読むか、中庭で昼寝でもするか、食堂に戻って……いや、最後の選択肢はナシ。


「お前なにしてんの?」


ギョッとして振り向くと、その声の主はさっき別れたはずの服部だった。


「突然現れないでよ、心臓に悪い」


あたしが言うと、服部は呆れたようにため息を吐いた。


「普通に声かけただけだろ。廊下の真ん中でケータイいじるとか、すげー迷惑なんですけど」


そう言って、スタスタとあたしを抜かして行く。

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