小さなキミと
オレの言葉が剛の逆鱗(げきりん)に触れたらしい。


「うるさい! あたしが大した事じゃ無いっつってんだから大した事じゃ無いの!
酔っ払いが記憶を無くすなんて珍しくもなんともないわ!
酔っ払いに可愛いって言われても頭なでられても嬉しくないし、酔っ払いにキスされても何も思わない!」


剛が一気にまくし立てたおかげで、オレの頭は針に刺されたようだった。


「……酔っ払い、てオレの事?」


剛が、ジロリと冷たい目を向けた。


何も言わないという事はつまりイエスという事であって、オレはやっぱり酒を飲んでしまったという事なのだろう。


「今の、本当?」


ふてくされた表情で、剛がコクリと頷く。


あぁ、そうか……。


オレは、酔うと思った事を全部口にしてしまうのか。


「……前も言ったけどお前はちゃんと、か、可愛い、から」


それまでの暗い表情は一転し、剛は目をパチクリさせた。


多分オレ、今顔真っ赤だ。

頬がすげぇ熱いから。


「見んなよ」


視界を遮るように剛の頭をくしゃくしゃっと撫でて、2つ目の項目もシラフでやり直しが出来たという事にしておこう。


残るはあと一つ。


「本当は今したいけど、口ん中気持ち悪いからまた今度な」


そう言って、オレはふわりと剛の頬に触れた。


いつも思うけど、コイツの肌ってすげぇサラッとしてんだよな……。


ずっと触ってたいくらいだ。


親指で何度か頬を撫でているうちに、本当に今キスしたくなってきた。


でも今は……ダメだ。


ベッドの上でキスとか、もう押し倒す自信しか無い。


多分止まんなくなる。


その露出度高い部屋着とか、この狭い部屋の圧迫感とかですでにヤバいから。


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