小さなキミと
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休み明けの月曜日、オレは今にも死にそうな顔で登校する羽目になった。


「うわっ、お前その顔どーしたんだよ」


部室に入るなり、先客のバレー部1年沢田(さわだ)がギョッとした様子で声をかけてきた。


「いや……今日ちょっと徹夜して」


カバンからシューズを取り出しながら答えたオレに、沢田は呆れた顔をした。


「なんでまた」


「数学の課題の存在忘れてた」


土曜は剛のことで頭がいっぱいで、ようやく課題の事を思い出したのが昨日の夕方。


日付けを超えるまでは自力で何とか頑張ったが、どう考えても終わりが見えなかったので、オレは最終手段に切り替えたのだった。


「あの課題、マジで量半端ねぇのな……
オレ後半全部答え写したけど、それでも徹夜だわ」


「お前夏休みの課題まだ終わってなかったのかよ。バカだな」


「うるせぇ」


沢田はねぎらいの言葉はくれなかった。


「ていうか服部、お前土曜日部活にすげえ遅刻してきたじゃん。
アレも前の日徹夜してたのが理由か?」


沢田が発した土曜日という単語に、オレは顔をこわばらせた。


「……いや、あの日は、ちょっと別件で」


「へぇ! じゃあただの寝坊じゃなかったってワケだ」


背後から割り込んできた声に、瞬時に振り返ったオレ。


「あれ、玉井(たまい)先輩!? 何で……」


驚いて思わず出た心の声に、オレは慌てて口をつぐんだ。


3年生の玉井先輩はもう部活は引退したはずなのに、なぜここに?


しかもこんな早朝の……2年もまだ登校してこない時間なのに。

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