小さなキミと
「いやぁ、早めに来たら何か面白そうな話聞けるかなーと思って。
土曜日2時間も遅刻したんだって? 服部くん」


言いつつ部室の入り口からスタスタと中へ入って来て、オレと沢田のちょうど間の床に腰を下ろした玉井先輩。


オレは背中に冷や汗が流れるのを感じた。


「ス、スミマセン」


「いーよ別に、だってオレもう関係ないし」


あっけらかんと言った玉井先輩に、少しホッとしたのもつかの間だった。


「ところでさ、お前の彼女ちゃんもその日部活に遅刻したってのは何か関係あんのかな?」


ギクリと肩を揺らしたオレ。


「ハァッ!? んだよそれ聞いてねぇぞ!」


沢田のそれは、当然俺に向けられたセリフだ。


「お前すげぇ体調悪そうだったからオレめちゃくちゃ心配したのに!」


オレはゴツンと頭に拳を食らった。


「なんだよ、ただのリア充かよ!
遅刻したうえ早退しやがってこの野郎!
そんで涼香に会いに行っ……」


言葉途中で沢田は前のめりに倒れた。


バシンッ、という大きな衝撃音とともに。


「お前がアイツを呼び捨てすんな!」


「……服部まじで馬鹿力……チビのくせに」


ボソリとつぶやいた沢田にもう一発かまそうと手を振り上げたところで、玉井先輩に止められた。


「お前ら、その辺でやめとけよ」


少し怖い目つきに変わった先輩に、オレたち1年は素直に黙った。

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