小さなキミと
鳴海さんに変な事を喋るんじゃないかと焦って、とりあえず引っ張ってきたは良いけど……。


よく考えたら、剛と顔を合わせるのはあの土曜日以来だ。


情けない事に、オレは今さら緊張していた。


人がいないところを探すけど、なかなかそんな都合のいい場所が見つからない。

適当に歩き回るうちに、気づけば付属の中学校の校舎に入ってしまっていた。


ここは、高校生立ち入り禁止の場。


見つかったら即生徒指導室行きだ。


慌てて引き返そうとすると、先の廊下の曲がり角から大人の声が聞こえてきた。


────ヤバい、とりあえず隠れるところを探さねぇと……!


たまたま近くにあった扉を、すがる思いで横に引く。


ガラッという小さな音を立てて、それは呆気なく開いた。


────よっしゃ、ついてる!


オレは剛の腕を引っ張って、そのよく分からない教室の中へと逃げ込んだ。


間をいれず、数人の笑い声と足音が、目の前のドアの向こうを通り過ぎて行く。


と、思いきやなぜか引き返してきた足音があった。


音からして、おそらく1人。


まさか、ここに隠れているのに気づかれた……?


────ガチャン。


ドアが開けられるのを覚悟していたオレは、何が起きたのか一瞬分からなかった。


突然の金属音。


パタパタと遠ざかる足音。


これは……つまり、


「今の、南京錠かけた時の音……だよね?」


遠慮がちにつぶやいた、剛の声に振り返る。


────しまった。


これは確実に、閉じ込められてしまったという事になるんだろうな。

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