小さなキミと





「────朝礼のチャイム、鳴っちゃったね」


言われなくても分かってる。


たった今、朝礼開始の本鈴が鳴り終わったところだからだ。


2人してドアの前にへたり込んで、一体何してんだろうオレら。


じゃなくて100パーセント、オレが悪い。


「あたし、朝礼すっぽかしたの初めてだな。あーあ、また説教だよ服部のせいで」


「……悪かったな」


ブーブー文句を言う剛に、オレは正直少し救われていた。


こんな狭い空間で、コイツと2人きりでの沈黙はかなり厳しいからだ。


ここはオレたちの教室の半分ほどの大きさしかなく、机の並び方も何だか変わっていた。


窓際と廊下側に机が集まっていて、真ん中の空間がポッカリ空いているのだ。


例えるなら、掃除中の教室────?


「なに、どしたの服部」


キョロキョロ辺りを見渡していたオレに、剛が不思議そうな顔をした。


「いや……この教室、何か変じゃね?
やけに狭いしカーテンも全部閉まってるし……」


すると、剛が驚きの事実を告げた。


「そりゃそうだよ、だってここ女子更衣室だもん」


────誰か嘘だと言ってくれ。


オレは今ほど自分を心底間抜けだと思ったことは無い。


「あら。もしかして服部クン、今気づいた感じですか?」


ああ、その通りだよ!

心の中でしか言い返せない自分が情けない。


「あれほど女嫌いだったくせに今じゃ女子更衣室に忍び込むとはね……」


剛はしみじみと言った。


「アンタ、成長したねぇ」


「ちっげーよ!」


その言い方は色々誤解を招くからやめてくれ。

< 267 / 276 >

この作品をシェア

pagetop