小さなキミと
いちいちムカつくヤツだな。


恨みを込めて、服部の後ろ姿を睨み付ける。


当然そのまま帰るんだろうと思ったけれど。

なぜか服部は、新校舎の玄関で回れ右して戻って来た。


あたしの目の前で立ち止って、バツが悪そうに視線を泳がせる服部。


思わぬ展開に、目をパチクリさせる。


「……オレ、借りとか作りたくねーから。チャリ、ちゃんと弁償するよ。いくらかかったの?」


「えっ!?」


思わず声が裏返った。

弁償だなんて、予想だにしていない内容だ。

もう無かったことにされたかと思ったのに。


「いいよ、それはもう。
こっちだって、何か知んないけどあんたのライト壊しちゃったみたいだし」


あたしは動揺が収まらないまま、言葉を紡いだ。


「あー、まぁそうなんだけど。あれはあっても無くても走れるし? 別にいいかな、って」


服部があっけらかんと言ったので、あたしは耳を疑った。


なんだって?

さっきと言ってることが違うじゃん!


何だか急に恥ずかしくなって、服部の方を直視できなくなった。


「あの、さ……さっきはごめん。あたし、ちょっと意地になってた」


窓の外に向かって、あたしは小さくつぶやいた。


どうせ馬鹿にするんでしょ。

いいよいいよ、もう好きにしてくれ。


悪いのはあたしです、ごめんなさい。


そんなことを思っていたら、意外な返事が返ってきた。


「しょーがねーなぁ、許すっ」


驚いて顔を向けると、なんだか楽しげな様子の服部がいた。

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