小さなキミと
「めっ、迷惑とかは思ってないし……。
あたしも、その……嬉しかったし」


そう言ってもらえると非常にありがたいが、逆にそのせいでオレが『愛してる』とかいう究極にクサいセリフをのたまったという信ぴょう性が高まってしまった。


というか、もう認めるしかない。


「……すげぇ聞きづらいんだけど、オレどのタイミングでそれ言ったワケ?」


途端、剛はボッと一気に赤面した。


「えと、その……」


言いづらそうな様子で言葉を濁す剛。


「キス……の合間、かな」


────訊くんじゃなかった。


真っ白の石造と化していたオレに、剛がフォローのつもりで言葉を足したようだ。


「全然、むりやりとかじゃないから! あたしもテンション上がってたし、別に嫌じゃないっていうか、むしろウェルカムっていうか、」


剛が何を言っても、罪悪感というのはそう簡単に拭えるものではない。


16歳を手前にして、オレは酒の怖さを学んだ。


記憶がなくなるってのは、本当に恐ろしい。


が、オレだってあの時の記憶が全く無い訳ではない。


────じゃあアレは、オレの夢でも妄想でも無かったって事か。


土曜の朝、剛のベッドで起きてから、一瞬だけ蘇った感触や匂い、それから音。


やけにリアルだったけど、剛が何も教えてくれなかったので、自分の中で勝手に解釈していたのだ。


でも────


「クソ、しっかり思い出せねぇ」


感覚は何となく覚えていても、それに至る経緯は全部記憶から抜け落ちている。


それから、どこまでいったのか、なんてのも分からない。

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