小さなキミと
みるみるうちに身体中の熱が上がる。


数時間前の出来事が、あたしの脳裏にありありと浮かんできた。


「……涼香、どうしたの? 顔すごい真っ赤だけど」


日向の声で、ハッと我に返った。


「ぁええっ?
いやっ、べべべ別に、何もないよ!」


あたしは慌てて言葉を繕い、深呼吸して気持ちを落ち着けた。


実は、今日は変則的な時間割で、2限目からは移動教室の連続だった。


つまり1限をサボったアレ以来、服部と顔を合わせるヒマも無かったという……訳で。


「本当にー? 超怪しいんだけど」


あははと笑って誤魔化しながら、日向から目をそらし─────入り口から少し離れた席に座っていたアイツと目が合ってしまった。


速攻、勢いよく回れ右。


「あたし用事を思い出したから、カエル……」


勘のいい日向にその手は通じなかった。







「で、今度のケンカの原因は何なのよ」


結の一言で、あたしと服部の箸が止まる。


どうやら結たちは、お馴染みのケンカのせいで、あたしと服部が口をきかなくなったと思っているらしい。


「え、ケンカ? 奏也たち、またケンカしてんの?」


結の向かいの席で、葉山くんが呆れた声を上げた。


「別に……」


含みを持たせるように、短く答えた服部。


彼はあたしの正面の席に居る。多分。


あたしが顔を上げられないから確信は持てないけど、多分居る。


赤面がバレないように、あたしは俯き加減で炒飯をちびちび口に運ぶ。


しかしまぁ、今朝のあたしはどうかしてたとしか言えない。


あんな大胆な……いくら負けず嫌いとはいえ、

自分だけ覚えてるのが癪(しゃく)とかいう、幼稚な理由であんな事……。


「あぁ、そういえば!」


あたしたちのただならぬ雰囲気を感じたらしく、人一倍空気を読める葉山くんが話題を変えた。


「剛さん、金曜の夜オレに電話した?」

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