小さなキミと
カランコロン……と、スプーンが床に滑り落ちた。


金曜の夜と聞いて、また、今思い出さなくてもいい事を頭に浮かべてしまった。


「あ、あぁ、あれ?
そ、そそそ、そうだったっけ?」


言った自分でも、これがスットボケだと丸わかりだと思った。


焦りすぎて返事をミスった。


とりあえず転がった箸を拾って机の上に顔を出した直後、服部とバッチリ目が合ってしまった。


内心飛び上がって、パッと目を逸らすと今度は隣の結と目が合った。


「涼香さん? 何を慌てていらっしゃるのかしら?
それとも何か後ろめたい事でもお有り?」


────うわっ、結が壮大な勘違いをしている!


恐ろしい笑顔の結にビビってしまい、あたしはうっかり口を滑らせた。


「ごめん、かける相手を間違えたんだ!
ね、服部?」


途端、食堂内のあたしたち5人の陣取る空間だけがシーンと静まった。


────あれ? あたし、何か変な事言ったかな。


チラリと服部を見やると、彼はキョトンとしていた。


まるで、なんの事だか分からないとでも言いそうな顔だ。


すると、葉山くんが探るように声を発した。


「えっと……? 何で奏也に聞くの?」


何でって、そりゃ服部の事で電話したんだから……


そこでやっと自分の愚かさを思い知った。


「あぁ! 違う違う、えっと、ほら、葉山くんじゃなくて服部の家族に用事があって、それで迎えに……」


────あああぁ、またあたしは余計な事を!


「迎え?」


「い、い、今のは聞かなかった事に!」


あたしの言葉なんて、横の女子2人には全く通じないも同前だった。

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