小さなキミと
わ、笑ってるよコイツ!

こんな顔、初めて見たんだけど!


いたずらっ子のようにニッと笑った彼の口から、ヒョコッと二本、白い八重歯が覗いている。


なにその八重歯。ちょっと可愛いじゃん……


「ゆ、許すって何? 調子乗るんじゃないっ」


照れ隠しに、また憎まれ口を叩いてしまった。


ダメだ。その笑顔調子狂う。


でも服部は、そんなあたしの慌てぶりを面白がっているようだった。


「っていうか、マジでいくらかかったの?」


ふと真面目な顔に戻った服部が、また同じことを訊いた。


細かい値段はまだ修理中なので分からないけど、ぶっちゃけ7千円ぐらいかかるらしい。


だけど、それを言うのは可哀想な気がした。


「教えない。アンタが卒業するまでの貸しにしとくわ」


ほんの冗談なのに、服部が本気で頭を抱えたのでつい笑ってしまった。


「分かった。じゃあ桜通りで何か奢(おご)ってよ。それでチャラにしてあげる」


あたしがそう提案すると、服部はすかさず食いついてきた。


「言ったな? それでチャラだからな? 後で絶対掘り返すなよ?」


そんなことで必死になる服部が、何だかとても可笑しかった。


「分かった分かった。言っとくけど、今から行くんだからね? アンタのチャリで」


「は!? お前、昨日それで反省文書かされたばっかじゃねーか。っていうか、車は?」


「あぁ、それがさぁ……」


みっちゃんのことを説明しながら、桜通りにどんなお店があったかを思い出す。


あたしの頭の中は既に、甘いスイーツでいっぱいだった。

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