小さなキミと
「みっちゃんに化粧で隠してもらったんだけど、分かる?」


指の隙間から目を覗かせて訊くと、結は遠慮がちに頷いた。


「何があった? 涼香んちって確かペット飼ってないよね」


そう言って、心配そうにあたしを見上げる結。


ペットなんて、そんな可愛らしいもんじゃない。


これはもうどうしようもないな、と諦めて手を下ろした。


「うちのクソガキどもにやられたの。
アイツら朝から取っ組み合いのケンカ始めてさぁ、もぉ信じらんないよ。
止めに入ったらこの有様」


自嘲気味に笑って、ドサッと着席した。


まったく、今日は朝から疲れたわ。


ふと視線を感じて左を向くと、すでに着席していた服部が、横目であたしをジッと見ていた。


「あ、クソガキって服部のことじゃないよ。弟ね、うちの弟」


途端、真っ赤になって怒り出す服部。


「べっつに、そんなこと思ってねーよ!」


「あぁ、うん、そーね」


あたしの気の抜けた返事が気に食わなかったのか、服部はあたしを鋭く睨み付け、プイッと顔を背けてしまった。


そんなあたしたちのやり取りに、横で苦笑いを浮かべた結。


「……で、ケンカの原因は何だったワケ?」


ちょうどチャイムが鳴り始めたので、その話題は朝礼が終わるまで持ち越しになった。

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