小さなキミと
これから、講堂で先輩たちによる部活動紹介が行われるので、新校舎へと続く渡り廊下は、大勢の一年生でごった返していた。


「おーい」


人をかき分けて、結の隣に顔を出したのは葉山くん。


「すごい人だよね。何でだろ、なかなか進まなくない?」


そう言って爽やかに笑った。


前から思ってたけど、葉山くんってなかなかのイケメンだよね。
人当たりも良さそうだし、相当モテるだろうなぁ。


結と楽しそうに喋る葉山くんの横顔を、ついつい食い入るように見つめてしまう。


あれだな。葉山くんは、癒し系というやつだな、きっと。


「剛って、圭みたいなのがタイプなの?」


「は!?」


どこからか聞こえて来た服部の声に、キョロキョロと辺りを見回す。


「どこに目ぇ付けてんだよ」


背中を叩かれて振り返ると、ヤツがいたのはあたしのすぐ後ろだった。


「あぁ、小っちゃいから分かんなかった」


スッと自然に漏れ出た心の声が、また服部を怒らせてしまった。


「お前がでかすぎるんだよ、バーカ!」


「うわっ、女子に向かってそれはないわぁ」


咄嗟に、ショックを受けた顔を作る。


「女子? どこにいんの?」


平然と言い放つ服部が憎たらしくてたまらない。


もういいや。あたしの負けで。

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