小さなキミと
もしも高校で部活に入るとするなら、あたしの選択肢は一つしかなかった。


小学3年生のときにバレーボールを始めて早7年。


いまさら他のスポーツで初心者に戻るのはごめんだった。


日向は席が近所ということで、あたしの中で顔と名前が一応は認識していたものの、話すキッカケを掴めずにいた。


なのでまともな会話を交わしたのは、入学してからしばらく経ってからだった。


部活動紹介があった日の放課後、第一体育館の玄関にて。


「えーっと……綾野さん、だよね? 隣の席の。綾野さんも、バレー部見学に来たの?」


おずおずと訊いたあたしに、日向はにっこり笑って頷いた。


「日向でいいよ、涼香ちゃん。あたし、中学でもバレー部だったんだぁ」


「マジで? あたしもバレー部だったよ。えー、どこ中? 試合当たったことあるっけ」


そのまま意気投合したあたしたちは、その日のうちに、一緒に入部届を提出したのだった。







今日の部活の場所は、いつもの第一体育館ではない。


その倍ぐらいの大きさの第二体育館で、男女混合で活動するらしい。


あたしたちは校舎の外の駐車場で女子の先輩たちと合流し、第二体育館へ向かった。


体育の授業でもまだ使ったことが無いので、入るのはもちろん近寄るのも初めてだ。

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