小さなキミと





国道沿いの大型パチンコ店の駐車場を突っ切って、裏道へ抜ける。


先の交差点を曲がって大通りを進むより、こちらの方が近道になるからだ。


道路の両脇には、似たような白い外壁の一戸建てが連なっている。


そんなに道幅は広くないし見通しも良くないけれど、そんなことを気にしていたら確実に遅刻する。


あたしは自転車で立ちこぎスタイルになって、猛スピードで駆け抜けていた。


それはもう、光の速さで。


「危ねぇなッ」


男の怒鳴り声を背中に浴びる。


おそらく、さっきすれ違ったウォーキング中のおじさんだ。


ごめんなさーい、と一応心の中で謝っておいた。


何しろ、これぐらい急がないと間に合わないもので。


長年運動部で汗を流してきたから、体力だけには自信がある。


スピードを緩める気は更々ない。


だがしかし、車は急には止まれなかった────


今度は、危うく対向車と衝突しそうになった。


当然ながら、お怒りのクラクションを食らう。


……逃げるが勝ち。


あたしは運転席に向かってペコッと頭を下げ、一目散に逃げ出した。


「バッキャローッ、轢(ひ)かれてぇのかーッ」


あぁ、ごめんなさい。

本当申し訳ないです。

だから、そんなに吠(ほ)えないで。


キレ気味の運転手に縮み上がったあたしは、早く彼の視界から消えたい一心で、更にスピードを上げた。

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