小さなキミと
「お前がやれよ、男だろ?」


やっぱり先輩には逆らえないようで、服部は渋々紐を受け取った。


やーい、怒られてやんの。


1人ほくそ笑むあたしに気づいたのか、服部は恨みがましいといった表情であたしを睨んだ。


「おーい、ちょっと来てくれー」


神田先輩は周りに呼びかけ、手の空いている部員たちを手際よく集めた。


ネットをピンと張らせるには、複数人の協力が必要なのだ。


「せーのっ」


神田先輩の掛け声で、ネット下部を水平に引っ張るあたしと部員たち。


服部が持つ2本の紐に力を加え、よりきつく結べるようにするためだ。


はたから見たら綱引きしてるみたいだろうな、とあたしは毎回思う。


その後、残りの紐もみんなで協力してテキパキと結び、支柱にカバーを被せた。


そうして完成したコートは全部で3つ。


あたしが手伝ったネットが一番ピンと綺麗に張れているような気がする。

というしょうもない優越感に浸(ひた)る時間はそうなくて、すぐに集合がかけられた。


「今日はせっかくだから、女子と混合でゲームをしようと思う」


話し始めたのは、さっきのゴツい顔の神田先輩だった。


この人、キャプテンだったんだ。

っていうか、混合でゲーム!? 喋ったこともない男子と?


「でも、その前に自己紹介だな。1年は男女一緒になること初めてだし」


神田先輩はそう言って、あたしたちにその場で座るように指示した。

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