小さなキミと
「南(なん)中出身で、えーっと、身長は……160くらいです」


俯き加減でボソッと言った服部は、すぐに座ってヒザに顔を埋めた。


うわぁ、耳真っ赤だ。

すっごく恥ずかしかったんだろうな、きっと。


服部の位置は、偶然にもあたしのすぐ前だった。

そんな位置関係には今の今まで全く気づかなかったあたしは、ちょっと切羽詰まりすぎかも。


服部も身長のこと、多少なりとも気にしてんのかな。


そうだよね、バレーなんて身長が大いに関係するスポーツなんだから。

何だか、ものすごーく親近感が湧いてきた。

あたしも負けてらんない。


「1年の剛 涼香、中央中出身で身長は173ですっ」


1年女子に順番が回ってきたので、1番乗りで一気に言った。


おぉ、という、小さなどよめきが嫌でも耳に入ってくる。


そうだよそうだよ。いつもさ、身長言うとさ、何か引かれるんだよ。

お前が訊いたんだろ、って言いたくなるときだってあったよ。


あー、恥ずかしいっ!


顔中がボワッと熱くなり、あたしは勢いよく座り込んだ。


あたし、多分さっきの服部と同じ顔してるわ……。


チラリ、と斜め前に視線を向けると、どこか驚いたような表情の服部と目が合った。


前向きに座ったまま、顔だけをこっちへ向けている服部。


なんでビックリしてんの?

あたしの身長なんて、もう知ってるはずでしょ?


不審に思っていると、服部はニッと口角を上げた。


なっ……馬鹿にしてんのかコイツ!


そりゃ、女子で173はデカすぎるって自分でも思うけどさ。


あたしは、笑わなかったのに!


一瞬で頭に血が上ったあたしは、服部から思いっきり顔を背けてやった。

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