小さなキミと
「あれは……なんつーか、何で笑ったかっていうと、さ」


きまりが悪そうに視線を泳がせながら、服部はボソボソと小さな声で続けた。


「……剛も同じなんだな、と思って」


言葉の意味が分からなくて、あたしは思わず目をパチクリさせる。


「なにが?」


そう訊くと、服部は少しだけムッとした表情であたしに視線を戻した。


「身長だよ。お前さ、自己紹介で身長言ったとき、真っ赤っ赤の茹でダコみたいになってただろ。
身体測定の後、偉そうに自慢してきたわりには気にしてんだなって思った」


ああ……なんだぁ、そういうことか。


ちょっとムカつく言い回しは、この際スルーしよう。


「そりゃ、気にしますよ。だって女子で173だよ?
自慢……確かにしたかも。あれはちょっと無理やりテンション上げてただけだと思う。ごめんねー」


軽い調子で言ったつもりだったけど、やっぱり服部は少し悲しげな表情になった。


「いや、別にいいよ。オレだってわりと気にしてるし」


あたしは、「そうなんだ」としか言えなかった。


身長の話題はちょっと苦手だ。


なーんか気まずい空気。


「……オレも正直に言えばよかったかなぁ。ダッセー見栄張っちゃったわ」


自嘲的に笑う服部が少し痛々しかった。


「そうだね。服部って確か160ないよね。159.6だよね」


慰めるのも違うと思ったので、あえて身も蓋もない言い方でズバッと言い切る。


小数点以下までしっかり覚えているあたし……ってすごいな。

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