小さなキミと
対する葉山くんは、不思議そうな顔で結とあたしを交互に見る。


多分、気づいてないっぽい。

いや、気づいてないふりか?


葉山くんはともかく、結は葉山くんと再開したあの日から、ずっと葉山くんを目で追ってるのだ。


分かりやすいにも程がある。


朝だって、部活なんかやってないくせにすっごい早くに登校したりして。

なんでも、サッカー部の朝練を教室から眺めているらしい。


まぁでも、これ以上つっこむと後で怖いから、もう何も言わないでおこう。


「っていうか結、そこ服部の席じゃん。来たらすぐに退かないと、服部怒り出すよ、きっと」


あたしが話題を変えると、結はどこかホッとした顔になった。


すると葉山くんが笑って言った。


「大丈夫。アイツ女子に怒ったりしないから」


「えっ!?」


あたしと結の、驚いた声が重なった。


「奏也はさ、昔から女子が苦手なんだよ。普通に喋るだけでもいっぱいいっぱいなのに、怒るとか有り得ない」


女子が、苦手だって?

あたしに暴言の数々を浴びせた、あの服部奏也が?


申し訳ないけれど、葉山くんの言うことが全く信じられない。


「それって、冗談だよね?」


あたしは疑いの目で葉山くんを見た。


「いやー、マジマジ。だからオレ、あんとき本当ビックリしたんだって。
入学式の次の日だっけ、剛さんと奏也が何かすっげー言い争ってたじゃん?」


「あぁ……まぁ、あれは事情が事情だし」


「いや、事情が何であれビックリだよ。アイツがあんな風に、女子に対してハッキリ物を言ってんの、オレ初めて見たもん」


葉山くんはどこか感心したようにそう言った。

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