小さなキミと
「あ、あたし退くね」


結が慌てて立ち上がったけれど、服部は「いや、別にいーよ」と素っ気なく言った。


「おれ3組に用事あるから」


そう言って、服部はカバンだけ置いてスタスタと教室を出て行った。


「……本当だ。服部くん、あたしには怒んなかった。それに、全然目、合わなかったんだけど」


服部が廊下に消えてから、結が感心したように言った。


「でしょ。あれ、冷たくて不愛想に見えるけど、緊張してるだけだから」


しっかりとフォローを入れる葉山くん。


緊張……?


「あたし、今まで服部くんとあんまり喋ったことなかったから、全然気づかなかったけど。
女子が苦手って本当っぽいね」


「ちょ、ちょっと待て、結。今ちゃんと見てた? 服部めっちゃ睨んでたでしょ、あたしを。
女子が苦手なら、あたしへのあの態度はどういうこと? おかしいでしょうが」


あたしの主張に、葉山くんも同意した。


「確かにおかしいかも。奏也ってあんな些細なことでいちいち目くじら立てるようなヤツじゃないし」


え! うっそだー。


「あ、でも身長ネタは例外」と葉山くんは付け足した。


「そもそもアイツ人見知りも激しいから、知り合って1カ月経たない相手に、しかも女子にこんなに打ち解けてんのはすげーと思うわ」


へぇ。

服部って実は人見知りなんだ。

あたしに対して打ち解けている……のか?


そういう言われ方をされると、あたしという存在が服部の中で特別な立ち位置にいるような気がしてしまう。


ちょっぴり心臓がむず痒くなったので、あたしは逃げるようにトイレに席を立った

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