小さなキミと
あたしはサッと腕を伸ばして、服部の答案用紙の絶妙な位置に乗っかった消しゴムをずらした。


「ゲッ、服部39点? 思いっきり赤点じゃん」


あたしの声に反応して、ビクッと肩を揺らす服部。


「お前ふざけんな勝手に見てんじゃねーよ!」


すぐさま答案を裏返しつつ、服部は声を荒げた。


「その台詞、そのままアンタにお返しするわ」


「もー、あっち行けや35点」


そう言って服部は、ハエでも追っ払うような仕草をあたしへ向ける。


「採点ミス発見したから38点ですッ」


鼻息荒くあたしが言うと、服部は呆れ顔になった。


「アホか。威張って言う点数じゃねーよ」


そんなあたしたちのやり取りがウケたのか、アハハと周囲で笑い声が上がった。


「お前らさー、夫婦げんかなら廊下でやってくれる?
さすがに教卓の真ん前で騒がれちゃー、俺の声聞こえなくなるでしょ?」


桜井先生が、面倒くさそうにとんでもないことを言った。


「やめてよ先生、コイツと夫婦とかマジ笑えない」


あたしが顔を引きつらせると「オレだって!」と服部も負けじと声を挟んだ。


「まーなんでもいいから、剛はとりあえず座ってくれる?」


桜井先生のせいで少し目立ってしまっていたので、仕方なくあたしは桜井先生に従った。


それにしても桜井先生はまだ20代後半なはずなのに、すでに若々しさが失われているような気がする。


せっかく男前なんだから、もっとシャキッとすれば絶対モテるのに。

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