小さなキミと
うなだれたあたしに、「まあでも」と日向が優しく言葉を続けた。


「やかましいのは事実だけど、世良くんは涼香たちのことウザいとかは思ってないよ」


「ホント?」とすぐさま食いつくあたしに、日向はすんなり頷いた。


「世良くんって、周りがどれだけ騒がしくても全然気にならないタイプらしいよ。
逆に静かすぎるとかえって気が散るんだって。
だから勉強するときは、絶対音楽聴きながらやるんだってさ」


世良くんに詳しすぎる日向に、あたしと結は呆気にとられて目をパチクリさせた。


「あのー、日向? 何でそんなこと知ってるの?
世良くんと日向が喋ってるところなんて見たことないような気がするけど」


すると、なぜか日向は頬を赤らめた。


「ライン、でね。こないだ交換したんだ」


「マジで!?」


思わぬ展開に、ビックリして前のめりになるあたしと結。


「いつの間に? 全然知らなかったよ」


「2人が購買に行ってるときだったかな。よかったらライン教えて、って言われてさ~」


まんざらでもない様子で弁当をつまむ日向に、あたしと結は思わず顔を見合わせた。


「日向~。世良くんとはよくラインするの?」


ニヤニヤしながらあたしが訊くと、日向は「まあね」と曖昧に答えた。


「日向は世良くんのことどう思ってるの?」


今度は結が直球の質問をする。


「どうって、別に……。ラインでは面白い人だなって思うけど、実際教室じゃ、あんまり接点ないしなぁ」


何でもないようにそう言って、日向はぼんやりと自分の箸を見つめた。

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