小さなキミと
「へぇ、変わってるねー。変わってるといえば日向だよ。
日向の前髪どう思う? ちょっと短すぎだよねぇ」


無理やり日向の話に持っていく結は、あからさますぎて少し笑える。


「え、えっと、いや……そんなことない、と思う、よ。そのままでも、十分……」


テンパった様子の世良くんは、よく分からない身振り手振りを交えて必死に言葉を選んでから、遠慮がちに日向を見た。


途端に真っ赤に染まる世良くんの顔。


おぉっ、脈ありじゃん!


茶化そうと思って日向を見てみると、こっちは耳まで真っ赤だった。


「あ、あたしトイ、お手洗い行ってくるっ」


ガタガタと椅子を倒す勢いで席を立った日向は、あっという間に廊下に消えた。


「……“お手洗い”だってさ」


残されたあたしは、ニヤリと笑って結に目配せをする。


普通にトイレって言えばいいのに。


結はあたしに軽く頷いて、世良くんの方へ向き直った。


「世良くんってさ、ぶっちゃけ日向に気ぃあるよね?
正直に言ってくれたらあたしら協力するよ。日向もまんざらじゃなさそうだし」


日向が居なくなったのをいいことに、結は明け透けな質問をかました。


「えーっと……」


世良くんはというと、相変わらず真っ赤な顔のまま、口元を引きつらせて視線を泳がせている。

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