小さなキミと
踵(きびす)を返したあたしに、すかさずガッチリ腕をからませる結。


あたしの正面に回り込んで、ジィっと諭すような目で見つめて来た。


そ、そんな目で見られたって……さ。


「涼香。青春とか若さとかなんて、一時(いっとき)のものなのよ。
出来るうちから行動起こしていかないと、気づいたら独り身のババアだぜ?」


……結のバカ。そんなこと言わないでよー!


結の説得力と行動力には脱帽だ。


あれだけ頑(かたく)なだったあたしが、一刻も早く彼氏を作らなければ孤独に死んでしまう、という切羽詰まった心情にいとも簡単に誘導されてしまったのだから。



寺井という人間は、筋トレだけが生きがいだと豪語している変人だ。

気さくで明るいし気がきくし優しいけど、変人だ。


狙うなら、寺井の脇を固める友人らしき2人男子のうちのどちらかだった。

2人とも身長がめちゃくちゃ高くて、ラグビー選手並みにガタイがいい。


結に言われて目が覚めた。


ぼけーっとしてるうちに、人生なんてあっという間に終わってしまうんだわ。

あたしみたいな女は、待ってるだけじゃだめなのよ!

顔なんてもうこの際どうでもいいわ!


すっかり結のマインドコントロールに侵(おか)されて、少々おかしくなってしまったあたしだった。

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