小さなキミと
結局、オレは圭のために400円を無駄にした。


「奏也って、オレより下手」


「うるさいっ」


生意気なことを言った圭を睨み付けるオレだけど、毎度どうしても見上げる形になってしまう。


クソッタレ。世の中不公平だ。


すると何かを察した圭が、オレの頭に手を置いてポンポンと軽く叩いた。


「よしよし」


「やめろッ」


オレは頭を撫(な)でられるのが大っ嫌いなんだって、コイツ分かってるくせに!


「今度、兄ちゃんが何でも奢ってやるからなぁ」

なんて馬鹿げたことを言いながら、圭はオレの首に腕を巻き付け、人の髪の毛をぐちゃぐちゃにし始める。


「やっめ、ろ……ってば」


やっぱり体格差がデカすぎる。

必死でもがいているのに、圭の拘束からなかなか抜け出せない。


この時間、ゲーセンには高校生がたくさん入り浸っていて結構混雑していた。

通り過ぎ様に、そいつらがオレたちを見てクスクス笑う。


圭といい、剛のバカヤローといい、どいつもこいつもオレをガキ扱いしやがって。


「いい加減にしろッ」


やっとのことで圭から解放されたとき、オレは疲労困憊(ひろうこんぱい)で激しく息切れしていた。


「お前、次やったら……マジで、許さんからな。一生……口きかねーぞ」


つーか圭! どこ見てんだよ!


せっかく親友がおっかないことを宣言したというのに、圭はすでにオレを見ていなかった。

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