小さなキミと
圭の目線の先は、数メートル先にあるプリクラのコーナーだった。


その場所に群がる派手な女子高生たちは、

やたらスカートが短くて、どいつもこいつも化粧が濃すぎて同じ顔に見える。


ゲッ、アイツら男だけで撮ってやがる。


今しがた、プリクラの機械から出てきた男子高生3人組を見てオレはゾッとした。


オレならあんな女だらけの場所、近寄りたくもないね。

そう思って圭を見ると、いつになく真剣な表情で圭は口を開いた。


「結が男といた」


そして突然、圭は駆け足で走り出した。


オレを巻き添えにして。


「ちょ、オイ放せって」


掴まれた手首が、心ここにあらずの圭にぐいぐい引っ張られる。


まったく圭はオレを一体何だと思ってんだ、ペットじゃねんだよ。

つーか本当に鳴海さんだったのかよ、それ。


途中で学生連中に何度かぶつかりかけ、あっという間にそこはもう女だらけの魔の空間。


息を切らせてプリクラコーナーまで走ってやって来た男2人に、女子高生たちが不審そうな目を向けた。


「ゆいッ」


そこで圭が大きな声でそう叫んだものだから、状況は最悪。

さらに彼女たちの視線を集める結果となった。


「け、圭ちゃん? えっ、どうしたの」


驚いた様子で振り返ったその女子高生は、化粧で少し大人びて見えたが、

正真正銘(しょうしんしょうめい)本物の鳴海さんだった。

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